肩こりを究明する
多い症状
複雑に関係
日本人の3人に1人が肩こりを自覚しているという調査結果があります。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、年齢層が高くなるほど肩こりを訴える人口比率は高くなり、70代以上では2人に1人の割合にまで及びます。ただし、この数字には入院者などは含まれていませんので、肩こり人口の実態は、もっと広いすそ野を持っていると考えた方が良いでしょう。なぜ、ここまで多いのでしょうか?肩こりは、そもそもが複雑な症状の複合体だからです。重い症状ではないかもしれませんが、肩こりは複雑で治療が難しい症状なのです。
一般的な、肩こり
一般的な肩こりの原因
姿勢
無理な姿勢は肩こりの原因になります。特に、足を組む癖のある人は要注意です。足を組んだ状態は、片方の坐骨(足の付け根)に体重が乗っている状態です。この状態が長時間続くと坐骨周辺が緊張してきます。坐骨が緊張すると、肩甲骨に緊張が伝わり肩こりを引き起こします。
ストレス
ストレスをためやすい人は肩こりになりやすいです。ストレスがどのように体に影響し、肩こりを引き起こすのかを神経系と姿勢の2つの側面から説明します。ストレスを感じると自律神経の交感神経が活性します。すると血管が収縮し血流が低下します。筋肉内部の血流が低下すると「こり」として症状が出てきます。これが体の中で起こっている神経系の反応です。次は姿勢との関係です。ストレスがかかると心が緊張した状態になります。心が緊張すると体は本能的に守ろうとして、身構えるような防御姿勢になります。それにより首や肩が緊張して肩こりが出てきます。
冷え
冷え性の人は全身、末梢の血流が悪いため、筋肉に老廃物や疲労物質が溜まります。この疲労物質が肩こりを引き起こします。また、冷え性がある人は、外気温に影響されやすく、エアコンの冷たい風に当たったり、急に気温が下がると肩こりが強くなる傾向にあります。首、手首、足首を冷やさない工夫、お風呂でよく温まる、適度な運動で筋肉を動かす事で体を温めるなどの対策が必要です。
内臓の影響(関連痛)
- 心臓病 狭心症や心筋梗塞では左胸から左肩にかけて痛みやこり感、又は激しい痛みの発作が起きる場合があります。
- 肝臓障害 肝臓や胆嚢に病気の疑いがあると右肩から肩甲骨に関連痛が出る可能性があります。
- 胃腸障害 胃の調子が悪くなると肩甲骨と肩甲骨の間から少し下にかけて、張り感や痛みが出る可能性があります。
顎・嚙み合わせ
噛み合わせが悪いと左右であごの筋力のバランスが乱れてきます。ひどくなると口が開かない、パキパキ音が鳴るなどの顎関節症になります。顎関節症になるとあごのバランスを取るために首や肩の筋肉に負担がかかり、常に緊張した状態になります。
運動不足
運動不足になると肩こりになりやすくなります。運動不足になると筋力が低下し柔軟性も低下してきます。すると筋肉が本来の伸び縮み運動をしなくなり、血流が悪くなっていきます。結果として、肩こりが起きてきます。
眼精疲労
目の疲れが肩こりの原因になっている事があります。目の使い過ぎで交感神経が活発化し、血管が収縮し肩こりが起こります。疲れ目の原因で一番多いパソコン作業ですが、最近ではVDT症候群(テクノストレス眼症)と呼ばれ、パソコンの使用と大きく関係する現代病ともいえる病気です。目の疲れが重症化すると眼精疲労となり、視力低下や頭痛、肩こりなどの体の症状も出現します。
当院の見解
難解な方程式
治りにくさ
症状の「重さ」×原因が「複雑」=治りにくさ
肩こりを軽視してる
専門性
肩こりを解消させる鍵は、複雑さにどのように対処できるかです。このプロセスは複雑にからんだ紐をほどくのによく似ています、絡んでだんごになった部分だけを見ていては絡みが解けないように、肩こりも凝り固まった部分だけを見ていては解決できません。つまり、凝り固まった部分をいくら揉んでも、症状は改善しません。期待できるのは一時的な局所効果です。鍼を使う場合も同様です。凝り固まった部分に鍼をしても楽に感じるのは一定時間です。原因が取り除かれない限り、再び肩こり症状が浮上してくる事になります。
「肩こり」難しさ
「肩こり」感覚である
凝り感の強さ=筋肉の硬さ(コリ)は、必ずしも比例しない。肩こりは「凝り感」という感覚異常という側面があります。凝り感の強さと筋肉の硬さは必ずしも一致しません。
凝り感=筋肉の硬さではない
押してみると柔らかいのに凝り感が強かったり、硬いのに凝り感が無かったりは珍しいことではありません、患者さんが辛いと感じる位置と術者が触れて硬いと感じる位置が同じであるとは限らないのです。患者さんの訴える位置に作用が及ばなければ、筋肉が柔らかくなっても患者さんは改善したと感じません。ですから施術は、患者さんの声に丁寧に耳を傾けることが大切です。
適当で、ぼんやり
別の問題もあります。人間の感覚は曖昧であることです、患者さんはコリのある位置を正確に認識しているとは限らないという事です。ですから、患者さんの感覚(訴え)を100%信じることもできない訳です。そんな時に役立つのが動作分析です。筋肉は必ず何かしらの動きに関与していますから、動きをチェックすることで本当の凝り位置を推測することができます。
「動き方」に着目
肩甲骨の問題
複雑な肩こりを解くため「動き」に着目しています、その中心となるのが肩甲骨です。肩甲骨の役割を正しく理解することが肩こり解決の第一歩となります。肩こりに悩む方の殆どは肩甲骨に可動域制限があり、肩甲骨が動きづらい状態となっています。その方向は人それぞれで、その方向が肩こりの性質を決めています。
項の問題
肩甲骨には実にさまざまな筋肉が関わっていて、多方向への運動をします。そのどれか一つに過緊張が生じても、肩こりを感じる可能性があります。肩甲骨に関わる筋肉はその周辺だけにあるわけではありません。胸、背中、腕、腰など広範囲に及んでいます。このように考えると、肩こりは肩の問題ではないことがわかります。肩甲骨は頚の動きをサポートしています、肩甲骨が動かなくなると頚の動きを補助できなくなるため、項(うなじ)の筋肉が強ばります。項をいくら揉みほぐしても、肩甲骨の動きに問題が残っている限り、強ばりが完全に取れることはありません。