難聴と耳鳴り
突発性難聴とは
増加傾向
突発性難聴は主に40~60代に多く、男女差はないとされています。また小学生など若年層にもみられ、患者数も現在増加傾向にあります。年間受療者数は2001年の3万5千人から、2012年では7万5千人まで増加しています。
突発性難聴の条件
【突発性難聴】診断の基準
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Ⅰ主症状、Ⅱ副症状の全事項を満たすもの 。
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Ⅰ主症状の1、2の基準を満たすもの。
- recruitment現象の有無は一定せず。
- 聴力の改善・悪化の繰り返しはない。
- 一側性の場合が多いが、両側性に同時罹患する例もある。
- 第Ⅷ脳神経(聴神経・内耳神経)以外に顕著な神経症状を伴うことはない。
recruitment現象:両耳のバランス検査。感音性難聴のある場合に、同じ音の変化でも健側よりも患側に大きく変化して聞こえる現象。
診断基準Ⅰ主症状
- 突然の難聴
- 文字通り即時的な難聴、または朝、目が覚めて気が付くような難聴。
- 高度な感音難聴は必ずしも高度である必要はないが、実際問題としては「高度」でないのと聴力が低下したことに気が付かないことが多い。
- 原因が不明、または不確実 つまり原因が明確でないこと。
診断基準Ⅱ副症状
- 耳鳴り 難聴の発生と前後して耳鳴りを生じる事がある。
- めまい、および吐き気、嘔吐 難聴と前後して、めまいや吐き気、嘔吐を伴うことがあるが、めまい発作を繰り返すことはない。
高音と中低音難聴の違い
内耳の損傷部位の違いによって、高音と中低音の難聴に分かれると考えられています。
突発性難聴の耳鳴り
突発性難聴を発症すると、多くは耳鳴りも出現しますが、耳鳴りは、突発性難聴の聴力が回復されると共に改善します。
聴力低下と耳鳴り
はっきりした原因はわかりませんが、有力説(仮説でありエビデンスで証明されていません)があります。「ウイルス感染」「内耳循環障害」「内リンパ水腫」です、いずれも内耳での異常が出現します。
耳鳴りの特徴
突発性難聴にみられる聴力の低下が原因の耳鳴りには特徴があり、低下した聴力と同じ音域での耳鳴りが発生するという事です。この耳鳴りの原因は脳との関連性があります。今まで聞こえていた音が突然聞こえなくなる事で、脳に混乱が生じます。脳は失った聴力を補正しようと感度をあげます。すると、ノイズが発生し、それが耳鳴りとして聞こえてきます。このような働きで耳鳴りが発生することから、聴力が回復することで脳は通常の働きに戻り、耳鳴りも消失します。
聴力と耳鳴り
耳鳴りを施術しているうえで、耳鳴りにも大きく2タイプに分かれていると感じています。一方は突発性難聴における聴力が落ちている耳鳴り。もう一方は聴力は正常なのに耳鳴りがあるタイプです。このタイプは特に全身症状を整える必要があります。
難聴の原因
- 「ウイルス感染」
- 「内耳循環障害」
- 「内リンパ水腫」
1.ウイルス感染
「ヘルペスウイルス」、「ムンプスウイルス」、「麻疹ウイルス」、「インフレンザウイルス」などのウイルス説です。
ポイント
- 難聴発作が一回きり
- 前駆症状で風邪と似た症状
2.内耳循環障害
二次的な出血、血栓、塞栓の梗塞による循環障害がおこり機能不全を起こしているのではないかというもの。
ポイント
- 星状神経ブロックに有効性がみられる
- 血管拡張剤、抗凝固剤の有効性がみられる
3.内リンパ水腫
内耳リンパ液の増加した状態です、なぜ増えるかは解っていません。内リンパ液の増加によって外リンパ液とのバランスに影響することで蝸牛間、前庭迷路にまで影響されると考えられています。
ポイント
- 「めまい」伴う突発性難聴は内リンパ水腫によるものではないか
- 低音域難聴型はメニエール病と同一範疇
蝸牛管:音を電気信号にかえ大脳へ伝える所
前庭:重力や平衡感覚を感知する所➡めまい
難聴の回復率
回復率
30%は完全によくなるとされています。残りの30%はある程度回復するが難聴が残る、さらに30%は難聴が回復しないと考えられています。
病院での医師の視点
- 基礎疾患(ウイルス性、糖尿病、心臓、腎臓)の有無
- 発症前に風邪に似た症状はあったか
- 耳の耳閉感、耳鳴りの有無
- 難聴は両側・片側か、今まであったか、進行しているか
- めまい発作があるのか
異常を探します、おもに外耳道と鼓膜に穿孔や癒着はないか、突発性難聴は第Ⅷ脳神経(蝸牛管と前庭神経を合わせて)だけの内耳性障害なので、他の脳神経、顔面神経、外転神経、三叉神経に異常はないかをみます。
聴力検査
- 気導聴力の低下だけみられる伝音難聴
- 気導・骨導聴力の低下みられる感音難聴➡突発性難聴
気伝導、骨伝導を純音聴力で測定します。測定方法はオージオメータという測定器をもちいて、ヘッドホンの様なレシーバーで音を聞きわける気導聴力、耳の後ろにバイブレーターを当て音を聞き分ける骨導聴力を計測します。
エックス線、CT、MRI
脳に腫瘍や異常がある場合にCT、MRIが有効です。当院でも病院のセカンドオピニオンで脳腫瘍から難聴、耳鳴りがあった例があります。
病院は薬
症状や生活習慣から、原因を考えながら薬を処方していきます。
薬の特徴
発症から1週間以内に投与開始しないと薬の効果が期待しにくい場合があります。
ステロイド薬
突発性難聴になった場合、病院の第一選択法となります。点滴や内服、鼓膜内へ注射で投与されます、ステロイドは強い抗炎症作用により、内耳の炎症と浮腫を鎮める効果があります。ステロイドは副作用の回避から医師の判断で一定期間までです。プレドニン5mgなど。強い薬の為、胃の保護薬を同時処方します。
ビタミン薬
ビタミン薬としてメチコバール、メコバラミン0,5mg(抹消神経の障害を回復させる目的)のビタミンB12剤、商品名が違いますが、成分の差はほぼありません。
抗凝固・血流促進薬
首から脳に入り内耳へ繋がる栄養血管は細いために血栓の塊が詰まってしまいやすく、これを改善させ、防ぐ働きをします。抗凝固・血流促進薬として数種類の薬があります。
代謝薬
神経代謝の薬としてアデホスコーワ錠(末梢神経の代謝を良くし、血管拡張させ働きを改善させる目的)があります、ビタミン薬と併用して処方される事が多い薬です。
利尿薬
内耳の水腫れを改善させる目的の利尿薬としてイソバイドがあります、内耳の過剰な水腫を減少させる事で、外耳とのバランスを良くさせます。
抗ウイルス薬
抗ウイルス薬、帯状疱疹薬としてバルトレックス錠、ファムビル錠、ゾビラックス錠(内耳でのウイルスの活性を抑制させる目的)があります。
鍼灸での回復
時間が決め手
難聴を患った場合、仮説の原因がいかなる場合であっても発症してから時間が経過していない段階で鍼の施術を開始しているかによって予後に差が出てきます。一週間~10日以内でしたら好条件です。
内耳が原因の場合、内耳細胞を早急に回復させなければなりません。内耳細胞は、再生しずらい物だと考えているからです。
専門的な鍼技術
当院の難聴への鍼は様々な視点から施します。発症から一か月以内であれば良くなる見込みがあると思っています。
もちろん更に早ければ早いほど予後は良いものになります。一か月を超えた場合でも回復の見込みがありますのでご相談ください。